▶︎皆生温泉 東光園

菊竹清訓|1964|鳥取

 鳥取県は米子市に来た。米子といえば、言わずとしれた名建築がある。皆生温泉の老舗旅館であるホテル 東光園。日本の伝統建築をモチーフにしたデザインと独自の構造から生まれた空間やファサードが訪れるものを虜にする。ジブンもこの建築のために、鳥取に来たひとりである。

 さて、到着したのは十五時ちょうど。チェックインからチェックアウトまで館内を散策するためである。着いて早々、堂々とした佇まいに圧倒される。力強い柱に浮遊感のあるフロア、とんがり帽子に渡り廊下と目を見張るほどの迫力。その佇まいは旅館というよりもはやお城の域である。

 いざ、入城。ロビーでまず目を引かれるのがあの力強い柱。室内でよりいっそう存在感を放っている。柱はコンクリートでできているが、板張り仕上げが和風を感じさせる。柱の奥にロビーが広がっているのだが、そこに置かれているのは剣持勇のランタンチェア(日本を代表するインテリアデザイナーでジャパニーズ・モダンを提唱した。代表作の一つ)。当然、ロビーの雰囲気とぴったりだ。さらに奥には大きな窓ガラス越しに日本庭園が広がる。世界的彫刻家の流政之が手がけたもの。インテリアもエクステリアも一流達による仕事でできている。それぞれに魅力的であり、全体としても調和のあるいい空間だ。

 受付けをする。建物見学の宿泊客が多いらしく、「館内見学はご自由にどうぞ」と案内があった。部屋で一息つくなり、散策にでかける。廊下に出て、ロビーに戻り、階段で最上階までのぼり、エレベーターで一階までおりる。庭にでてみたり、日本海や大山が眺められる空中ピロティを渡ったり、使われていない大広間へ入ってみたりする。

 私の心の中は、もう完全に、キクタケ・イズ・ベスト。床の高低さ、照明、仕上げ、サインなど一つ一つの部分に配慮を感じられる。ファサードで感じたダイナミズムと細部に光るセンス。心が躍る。ただ、竣工後半世紀経ったせいで、建物の様子はかなり草臥れている。部分的に廃墟化している。最盛期の輝きは、もうない。

 同時代に建てられた有名な建築に中銀カプセルタワービルがある。このビルは「メタボリズム」という建築運動.の代表作。メタボリズムとは、古い細胞が新しい細胞に入れ替わるように、古くなったり機能が合わなくなったりした部屋をまるごと新しいものに取り替えることで、社会や人口の変化に合わせて、変化し成長する建築を目指したもの。メタボリズムの中心メンバーに中銀カプセルタワービルを設計した黒川紀章と菊竹清訓がいる。二〇二二年、中銀カプセルタワービルは老朽化により惜しまれつつ解体されてしまった。同志の想いは果たされずににおわった。そして東光園もまた岐路にたっている。

 解体され幻の建築となるのか、リニューアルされ当時の輝きを取り戻すのか、それとも年月を経て魅力を増す出雲大社のようになるのか。これからの動向が気になる。同時代の建築も見れなくなるまえに、見に行かねば。